羽が生えたことも

近所のホームセンターに駐車場用の縁石を探しに行った。
意外と選択肢が少なく、確かに自分の記憶でもそんなに種類が多いものではないと気付いた。

その帰り道、銀杏の葉の隙間から左目が二つまばたきもせずに私を見ていた。「そんなことないよ」そう言って私は黄色い葉を蹴ってその目を覆い隠した。
気付けば手に持っていたコカコーラのペットボトルはいつの間にか銀杏の葉で一杯だ。そうなのだ。私はいつまでもそういうことを繰り返している。夏が終わっても。思い出すのは聡明なあなたの目、上海で飲んだ名前の分からない酒、正午の海、耳元で「いつもそうやってやり過ごしてるのね」、縁石、葉の間から覗く二つの左目、動物病院の入口で飼われていた大きな亀、句読点のない世界、友達と友達のアバンチュール、靴紐を結ぶあなたは祈りのような形をしていた。

家に帰り着いてバーミヤン酸辣湯麺が食べたくなった。嘘つき。

松井良太