オマケ人生一日目

私には見たい景色がある。食べたい物も、着たい洋服も、迎えたい明日も、会いたい人もいる。それらと目を合わせたり、手を取り合ったり、同じ言葉で話す必要はなくて、気持ちがあればいい。自分にとって豊かだと思う選択をすること。それが人生であって、冒険なのだ。

初めて見たベンジーも、久しぶりのTHE NOVEMBERSも。こんな私にとっても彼等は光で、時には宗教だった。20歳の私には彼等のような光源だけに生きる意味や今があると思っていた。つまり、光に群がる様々な形や色をした虫の中に自分の姿があることも分かっていた。悲しくもない。なんてネ。けれど渋谷に雨の降った日、ベンジーが「SWEET DAYS」のギターを鳴らした瞬間に訳もわからず涙が溢れて、この時の為に生き続けたんだと思った。それは二日後の「ウユニの恋人」もそうだった。三年前の12月に下北沢CLUB QUEで初めてこの曲を聴いた時と同じ、心臓がフワッとなる感覚。少し強い口調で「君を愛しているだけ」と歌った小林祐介の……。新曲もとても良かった。

私にとって11月の最後の日は昨日。あなたの着ていた洋服がとても素敵で、吐き出された私の冷たい息も空へ昇るのをためらうような景色。


松井良太