ベリーナイス自己愛

つい数年前まではよく季節の変わり目に体調を崩していた。「松井くんは身体弱いよね」なんてことをそんなに親しくない人から言われたりもしていた。今となっては年に一度鼻風邪をひく程度だが、その度にちょうど高校生三年生の文化祭の頃を思い出す。その付近で高熱を出してぶっ倒れていたからだと思う。近所でも夕方頃に、制服の男女が何やら大きな木材や100円均一のビニール袋を持って学校へ入っていくのを最近は目にする。胸を焦がす景色。不安さえ覚える。
あの頃の私、空気の乾いた秋の日と、窓から見下ろした女子生徒が脱ぎ捨てた紺色のカーディガン、サイケデリックな色彩の木の板、教室の蛍光灯が照らす暗い廊下、「カップヌードルの麺って食用ミミズなんだって」「えー最悪」「でも美味いからいいんジャネ?」…………今の私が生まれたのは恐らくこのあと二年後、この頃の私は青さすらなかった。無色透明、恋人に愛想を尽かされて半分死んでみたり、椎名林檎と一緒に「私は17歳。周りは皆同じ顔に見える」と小さく歌っていた。

と、言いつつ私はまあまあクラスの人気者で客観的に見ても美少女と言えるような彼女がいて、スクールカーストではそこそこ上の方にいたから、今前髪で目を隠してるお前らが歌うことの真意は充分分かっているが、センスのない陰気臭さはとてつもなくダサいとも思う今、とりあえずオレの前からは消えろ。おやすみ


松井 良太